つまり、コミュニケーションの問題である。 残念ながら、日米問わず、じつによくあるケースだ。
まさに「笛吹けど、踊らず」である。 過日、某音響メーカー(社員数500人)で管理職研修(対象40人)を行ったのだが、たまたま、当日、社長が不在だったのをいいことに、「ところで、あなた方は自社の方向性、ビジョン、目標、戦略をどのくらい理解しているだろう?細目はいい、大枠だけでいいから、述べてごらん」とやらせてみた。
結論を言おう。 理解度80パーセント以上はゼロ、70〜80パーセントが1人。

60〜70パーセントが3人。 あとはすべて60パーセント以下であった。
管理職であるにもかかわらず、40人中36人、つまり圧倒的多数が「よくわかっていない」と答えたのである。 60パーセント以下がはたしてどのくらい「以下」なのかはあえて訊かなかった。
推して知るべし、というところだろう。 あとで社長にインタビューすると、自信満々。
「わが社はきちんとペーパーに落とし込んで説明していますからね」と4色印刷の経営計画策定書を見せてくれた。 「ああ、なんたる勘違い!」社長は説明したつもり、管理職は説明されたつもり。
実際はほとんど伝わってはいなかったのである。 零細企業であろうとかまわない。
足下の仕事をきちんとこなしながら、一方では、「こうなりたい」「こうしょう」とビジョンや目標を描く。 こういう会社が、明日、明後日のSニー、ホンダになるのである。
ある日突然、神風が吹いてTヨタになれるのではない。 ITブームで浮かれた社長たちを見るがいい。
実力もなしに上場したものの、バブルが弾けた途端、一直線に墜落した企業のなんと多いことか。 いまだに死に体の会社も少なくない。
明らかに準備不足が原因だ。 ビジョンが描けただけの段階で神風が吹いてしまった。

確たる目標も戦略もなかった。 だから、風が止んだら墜落してしまった。
グライダーにはエンジンがついていない。 風任せ、景気任せ、あなた任せの他力本願では無理というもの。
かといって、大企業の中にはこれらのビジョン、目標設定、戦略策定についても、経営計画室など、一部の専門スタッフが。 作文してでっちあげるケースも少なくない。
もちろん、こんな魂の込もっていない計画書が実行に移されるわけがない。 みんな、事情を知っているから、社長の言い分を聞いてはいるが、官僚の作文を読み上げる大臣同様、「どうせ作文だ」と本気で取り組むつもりなどさらさらない。

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